6月下旬、橋本市立高野口小学校。歴史ある木造校舎の教室で、今年度2回目の同小保護者懇談会「ママズカフェ」が始まりました。参加者は16人。夫婦で参加した保護者もいます。

 「黄色の食べ物を思いつく限り書き出してください」。同市家庭教育支援チーム「ヘスティア」の講座部スタッフ、松本祐代さん(56)が呼び掛けました。まず、心身をリラックスさせると共に、気づきを誘うゲームです。「チーズ、パプリカ、カレー……」。グループに分かれた参加者らは口々に思いついた食べ物を列挙しました。自分が思いつかなかったものが出てくると、参加者からは思わず「あ〜」の声。この日のキーワードとなった「あ〜」は、他者を認める言葉ともいえます。食べ物は個人で最高が12個、グループ最高は21個、全体では36個挙がりました。「みんなで考えたら1人の時よりこれだけの数を発表することができました」。松本さんは黒板を示しながら、「子育ても一緒。1人で悩むよりも、みんなで知恵を出し合ったら、より多くの解決策が見つかると思います」と語りました。

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 かつて高野山宿場町として栄えた同市は、北部に大規模ニュータウンが開発され、新住民が増えています。若い母親らは、見知らぬ土地でどこに相談したらいいのかわからず、悩みを抱えて子育てをしているのではないでしょうか。「ヘスティア」はそんな家庭をサポートする官民連携の団体で、県内初の取り組みでした。

 依頼を受け、派遣されたスタッフがワークショップでファシリテーター(進行役)を務め、子育ての悩みを語り合い、親同士や親と教師のつながり作りの場を提供しています。

 スタッフ33人は地域住民です。松本さんは独自に子育て女性の支援活動をしながら「ヘスティア」の活動もします。この日、一緒に派遣された鈴木敏子さん(59)は主任児童委員です。地域の多様な人材が集結し、得意分野を生かして活動しています。

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語り合いワークショップでは、母親らの子育ての本音が相次ぎました=和歌山県橋本市高野口町で、桜井由紀治撮影

 高野口小のママズカフェは、ゲームから語り合いに移りました。子育てで困っていること、うれしかったこと……。母親からは、日ごろ胸の奥に閉じ込めていた本音が飛び出しました。「子どもから最近笑わへんねと言われてはっとした。親のことよく見てるんやな」「体の細い子で心配だったけど、4年になって初めてリレー選手に選ばれた。走っている姿を見て涙が出てきた」

 新たな気づきも生まれてきます。4人の子を抱える母親は「2人目までは他の子と同じようにできるようにしたらなあかんと必死やったけど、3、4人目には手をかけられんようになった。でも、今はできない子が、かわいいと思える」と話しました。しつけに頑張らないといけないという強迫観念が消えると、気持ちが楽になり、子どもに対する見方も変わります。共感が広がり「素晴らしい」と声が上がりました。

 「普段話す機会がないので楽しい。新たな発見もある」「恥ずかしいことも平気で言える自分がいる」。参加した母親の感想です。ママズカフェは、わいわい話せる「ママ友」を求める母親同士の出会いの場でもあります。

 「私自身がそうだった。この集まりでどれほど救われたことか」。ママズカフェ会長で小5の長女がいる岡北由実子さん(40)は語ります。岡北さんもこの地域に移ってきた当初、友人がおらず不安で寂しい日々を送っていましたが、「ヘスティア」のワークショップで仲間の輪を広げました。

 この日は「入学児童の保護者の参加が期待されていたが、かなわなかった」と岡北さんはいいます。「新入生の親の中にも、きっと寂しい思いをしている人がいるはず。声を掛けて心を温めてあげたい」

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 地域ぐるみで子どもを育てる社会の再生が求められています。「子育て家庭を孤立させない」を合言葉に、地域住民らが保護者をサポートする橋本市家庭教育支援チーム「ヘスティア」の取り組みを紹介します。